以前よりHuman-T-cell leukemia virus type1 (HTLV-1) ぶどう膜炎の発症機構の解析を目的に臨床検体を用い研究を行ってきた。同じHTLV-1で発症するHTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)の患者では末梢血感染細胞数が増加していることが報告されていた。我々はこのウイルス感染で起こるぶどう膜炎において同様な現象がみられるかを検討した。その結果、HTLV-1ぶどう膜炎患者の末梢血感染細胞数が無症候性キャリアーに比べ有意に増加していることが明らかになった。これら2つのHTLV-1感染によって起こる炎症性疾患において、感染細胞数の増加が発症の要因となっているのか、あるいは炎症の結果なのかはまだ明らかになっていない。 今回この点について検討を加えることを目的にHTLV-1ぶどう膜炎患者の末梢血におけるウイルス感染細胞数の経時的変化を定量的PCRを用いて解析した。 対象は6症例で男性2人女性4人、38歳から70歳(平均年齢56.8歳)であった。それぞれ臨床経過中に複数の時点で検体を採取した。検体採取の間隔は1カ月から21カ月(平均8.3カ月)であった。定量的PCRを用いて測定した感染細胞数の変動幅は0.2%から3.3%(平均1.2%)であった。 この感染細胞の割合の変動が有意であるかについて、PCRを用いた実験系における誤差を考慮し、実験を繰返し再現性を確認する予定である。また感染細胞数の変動と病像との関係は今後検体数を増やし更に検討を進める予定である。
|