唾液腺の再生過程に出現する種々の建造物の立体的な位置関係を明らかにする目的で本研究を行った。ラット顎下腺に障害を与えるためにYAGレーザーを照射し、経時的に試料を作製した。試料より準超薄連続切片を作製し、データをコンピューターに入力、再生上皮の三次元的走行を観察した。 照射後1日目には照射部は壊死巣となり、残存する小葉との境界は明瞭であった。3日目には増生した肉芽細胞中に導管様構造や少数の上皮細胞clusterが観察された。5日目にはこれらが多く認められるようになった。立体復構造では、再生導管上皮は残存している小葉内導管あるいは小葉間導管から肉芽組織中に伸び出した上皮細胞索を形成しており、複雑に分岐しながら立体的に種々の方向へ向かって伸長していた。基本的にはこれらは残存組織に近い部分では導管様構造、遠い部分では上皮細胞clusterとなっていたが、一部では上皮細胞cluster内にも管腔がみられ導管様を呈する部分も認められた。このような管腔は残存している導管の管腔には連続していなかった。以上の結果より、導管上皮の再生は残存している小葉内導管および小葉間導管側から起こっていることが明らかとなった。また、再生上皮における管腔は残存導管から先端に向かって形成されるだけでなく、上皮細胞cluster内からも形成されていることが示唆された。 一方、再生上皮における増殖活性部位の三次元的分布に関しては本年度内に検索できなかったため、今後さらに検討を加える予定である。
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