研究概要 |
電位依存性カルシウムチャンネルのα1(A,B,C,D)とβ(β1、β2、β3、β4)サブユニットの遺伝子発現局在所をラット成獣、発達過程でin situハイブリダイゼーションによって示した。成獣脳ではAおよびBは主に小脳皮質、海馬に、特にAではプルキンエ細胞に強く、CおよびDでは嗅球僧帽細胞、顆粒細胞、歯状回に主に発現していた。β1は嗅球僧帽細胞と歯状回に、β2は海馬とプルキンエ細胞に強い発現がみられた。β3は嗅球僧帽細胞、顆粒細胞、内側手綱核に、β4は嗅球僧帽細胞、プルキンエ細胞、顆粒細胞に強い発現がみられた。このα1とβサブユニットのパターンの比較で、β4はAのP型チャンネルと、β1とβ3はDとCのL型チャンネルと複合していると思われる。しかし、パターンの不一致が幾つかの脳領域にみられた。L型チャンネルのCの遺伝子発現ではグリア細胞にもはっきりした発現がみられた。 発達過程の脳では、すべてのα1及びβサブユニットで外套層に発現が認められたが、脳室神経上皮細胞層には認められず、嗅球、海馬、小脳を除きほとんどの脳の領域において、生後の早期に発現の減少を認めた。これはカルシウムチャンネルが神経細胞の分化に密接な関係を持っていることを示唆する。 歯胚ではA,Bはdentinogenesisのmantle zoneの形成期に一致してオドントブラストに発現し、C,Dは特定の時期に一致する発現の増減は認められず、比較的低いレベルで一定であった。また、どのタイプのカルシウムチャンネルも石灰化開始に呼応した発現はなかった。これは石灰化に必ずしも細胞内をカルシウムイオンが通過する必要が無いことを強く示唆するものである。 今後ナトリウム/カルシウム交換系など、カルシウム関連の蛋白質の遺伝子発現に関する知見の蓄積が石灰化の解明にぜひとも必要であり、この視点に立って研究を進めるつもりである。
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