破骨細胞の起源は造血幹細胞、中でも単球・マクロファージ系の前駆細胞であると考えられているが、その分化過程はいまだ明らかではない。我々は、生体内での分化過程を胎生期ラットの造血の場(卵黄嚢→肝)と軟骨内骨化を起こす長幹骨の骨原基において調べてきた。その結果、単球・マクロファージ系細胞と破骨細胞に共通のマーカーであるED1陽性単核細胞が肝造血期の肝臓に認められたが、成熟破骨細胞の有する炭酸脱水酵素アイソザイムII(CAII)と酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)に反応を示すものはなかった。一方、骨髄造血の起こる直前の胎生16日の骨原基の軟骨膜(perichondrium)にもED1陽性単核細胞が出現した。これらのED1陽性単核細胞はCAII、TRAPともに陽性を示し、胎生17日ではこれら陽性細胞の一部が軟骨膜を破って肥大軟骨内に侵入し、多核のものも認められた。これより、軟骨膜のED1陽性細胞は前駆破骨細胞と考えられた。 平成6年度科研費にてCAIIのcDNAから、RT-PCR法にてRNAプローブを作成し、造血の場(卵黄嚢→肝)と骨原基におけるCAII合成をin situ hybridizationにて調べた。その結果、胎生9-10の卵黄嚢造血細胞、胎生14-17日の肝造血細胞にはCAIImRNAの発現は見られなかったが、胎生16日の骨原基の軟骨膜にCAIImRNA発現の見られる単核細胞を認めた。胎生17日では軟骨膜を破って肥大軟骨内にもCAIImRNA発現細胞を認め、その一部は 多核細胞であった。なお、胎生期ラットの造血は脾臓でも行われるが、現在検討中である。以上から、前駆破骨細胞は、CAIIの合成を軟骨膜の段階で盛んに合成しており、脾臓を除くと軟骨膜が破骨細胞への分化・誘導に重要な造血微細環境(hematopoietic micro-environment)を提供すると考えられるが続けて検討中である。
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