歯髄炎におけるカルシウム結合蛋白の役割を調べることを目的として、まず、カルシウム結合蛋白の歯髄における分布とその由来について調べた。Parvalbumin(PV)・Calbindin D-28k(CB)・Calretinin(CR)を含む神経線維は、ラット臼歯歯髄に観察された。根部歯髄において、PV線維とCB線維は、平滑で太く、CR線維は、平滑なものと念珠状のものとが観察された。これらの線維は、根部歯髄内を上行し、髄室へと進入していた。PV線維やCR線維は、天蓋付近や髄角部における象牙芽細胞下層付近で、枝分かれし、象牙芽細胞層においては、ほとんど全て念珠状となり、それらの一部は、象牙芽細胞層に侵入していた。また、CB線維は、象牙芽細胞層には、認められなかった。象牙前質・象牙質には、カルシウム結合蛋白を含む線維は、認められなかった。根部歯髄及び象牙芽細胞層における全ての念珠状のCR線維及び象牙芽細胞下層における一部の念珠状のCR線維は、タキキニンも含んでいた。しかし、タキキニンのみを含む線維も歯髄には、豊富に観察された。retrograde tracerであるfast blueを歯髄に注入し、これらの神経線維の由来を調べたところ、歯髄を支配する三叉神経節細胞の約30%にPVが、約10%にCBが、約2%にCRが、認められた。また、CRは、tachykininと、PVは、calcitonin gene-related peptideと共存していることが、明かとなった。calcitonin gene-related peptideを含む神経繊維の数は、炎症歯髄において、増加することが、知られており、これらのカルシウム結合蛋白を含む神経線維も炎症歯髄において、変化する可能性が、示唆された。歯髄炎におけるこれらのカルシウム結合蛋白を含む神経線維の動態については、現在、研究中である。
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