研究概要 |
ニホンザルの舌咽神経内の交感神経およびその求心性線維と遠心性線維の検索を行った。 実験にはニホンザル15頭を用い,舌咽神経の末梢枝を剖出し,その末梢枝にHRPを注入し48時間生存の後,灌流固定し,脳幹部と末梢の神経節(舌咽神経上神経節,下神経節,迷走神経上神経節,下神経節,交感神経上頚神経節,中頚神経節,下頚神経節)の60μmの凍結連続切片を作製しHRP検出反応を施した.舌咽神経の末梢枝は,頚動脈洞と頚動脈小体を支配する頚動脈洞枝,舌根部を支配する舌枝,咽頭収縮筋を支配する咽頭枝より構成されていた.頚動脈洞枝は迷走神経とも連絡があり,また交感神経上頚神経節とも連絡があった.この頚動脈洞枝にHRPを注入すると,同側の孤束核に標識終末が見られ,顔面神経核の背内側方の網様体の中にも標識細胞が見られた.また末梢の神経節においては,舌咽神経上神経節,下神経節,迷走神経下神経節,交感神経上頚神経節に標識細胞が見られた.舌枝に注入した例においては,孤束核に多数の標識終末が見られ,また一部の例においては三叉神経脊髄路核の中間亜核の背側部に標識終末が見られた.又,標識細胞に関しては下唾液核に出現した.末梢の神経節に関しては舌咽神経上神経節,下神経節に標識細胞が見られ,交感神経上頚神経節にも標識細胞が見られた.一方,咽頭枝に注入した例においては,脳幹内には,標識終末は見られず,標識細胞が疑核の顔面神経後核と細胞緻密部に出現した.末梢の神経節に関しては少数の標識細胞が舌咽神経下神経節,迷走神経上神経節,交感神経上頚神経節に出現したのみであった. 以上の結果より舌咽神経の頚動脈洞枝と舌枝は主に求心性の要素よりなり,咽頭枝に関しては主として遠心性の要素よりなるということが分かった.また今回の実験では舌咽神経のどの枝にも交感神経の要素が多少なりとも入っていることが分かった。
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