研究者らは非イオン性界面活性剤であるTriton X-100がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のβ-ラクタム系抗生物質に対する感受性を大幅に高めることを見いだし、Triton X-100のMRSAに及ぼす影響について検討した。Triton X-100はMRSAのβ-ラクタム剤耐性を担うといわれているPBP2Aの産生やβ-ラクタム剤に対する親和性には影響を及ぼしておらず、またPBP2Aの産生を調節する因子であるmccR1-mcc1やpenicillinase plasmidの有無に関わらずその効果は認められた。このことから、Triton X-100による効果はPBP2A以外の因子に影響を及ぼすことで感受性を高めていることが明らかになった。Triton X-100添加により菌の自己溶解能は高められ、自己溶解酵素を調節するといわれるリポタイコ酸の遊離を促進した。しかし、MRSAより自己溶解酵素活性欠損株を分離しTriton X-100の効果を検討したところ、親株と同様にTriton X-100添加によるβ-ラクタム剤の感受性に変化が認められた。このことから、Triton X-100による自己溶解能の活性化で感受性に変化を及ぼしているのではないことが明らかになった。また、population analysisによりTriton X-100の添加でhomogeneousな耐性を示すMRSAはその耐性パターンがheterogeneousになり、heterogeneousな耐性を示すMRSAはその耐性パターンが左方に移行した。したがって、Triton X-100によるMRSAのβ-ラクタム剤に対する感受性の増大はその耐性度を減少させること(耐性パターンの変化)niよるものであることが判明した。
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