A.actinomycetemcomitans 310-a株の培養菌体から線毛抗原を井上らの方法に則り精製に成功した。他の臨床分離株からも微量ではあったが線毛抗原の回収に成功した。しかし本菌種の標準菌株であるATCC 43718株等からは本抗原は回収出来なかった。310-a株においても、多数回の継代によって本抗原は消失することが判明した。 精製した線毛は、電顕にて観察の結果本菌種に特徴的な線毛であることが確認できた。精製線毛はSDS-PAGEによって分子量約54kDa付近にバンドを形成した次いでEdmanreactionによって310-a株より得られた精製線毛タンパクのN末端から42番目までのアミノ酸配列が判明したが、他の菌株より得た線毛抗原はのアミノ酸配列は末端が修飾されているために不可能であった。今回得られた線毛抗原微量のため、より効率的な精製方法をロトフォアを利用して確立するために、線毛抗原の特徴を検索す目的で、二次元電気泳動を行い、等電点を求めた。新たな方法によって大量精製が可能になれば、抗体を作成して、本抗原の持つ感染防御における意義、クローニングに利用できるが、世界中の口腔細菌学者が本菌線毛の精製から撤退している現状を考えると、相当の困難が予想される。しかし定着因子としての線毛の意義は看過出来ないことは、他の菌種についての研究より明白である。そのため焦眉の急である線毛抗原の免疫原生を検索するために、得られたアミノ酸配列からの抗原性の高いと思われる部分のoligopeptideを合成することを企画している。
|