研究概要 |
申請者は、過去において、成人性歯周炎発症の重要な因子の一つであるPorphyromonas gingivalis(Pg)エンドトシンの活性本体であるリピドAの分離・精製に初めて成功し、その構造を各種分析により解明した。本研究では、先の研究において唯一不明であったヒドロキシ脂肪酸の光学配座を決定するとともに、PgリピドA構造体の化学合成を試みた。 PgリピドAから回収した各脂肪酸をメチルエステル誘導体とした後、シフト試薬(Europium III complex)を用いたNMR解析により分析した結果、PgリピドAに存在する3種類のヒドロキシ脂肪酸(3-OHiC15:0,3-OHC16:0,3-OHiC17:0)は、全てR配座であることが判明した。過去のデータに本成績を付け加え、PgリピドAの化学構造に関する論文を投稿した(accepted in Journal of Bacteriology,1995)。 PgリピドAは、非常に特異なイソ体の脂肪酸を含有しているため、同成分の合成に多大な時間を要した。各種ヒドロキシ脂肪酸中、(R)-3-OHC16:0の化学合成は完了した。(R)-3-OHiC15:0および(R)-3-OHiC17:0に関しては、その前駆体であるiC13:0およびiC15:0までの合成が終了している。飽和脂肪酸であるC16:0は市販品を購入した。また、リピドA還元および非還元末端共通の前物質であるAllyl2-deoxy-4,6-O-isopropyliene-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-α-D-glucopyranosideの合成も完了している。(R)-3-OHiC15:0および(R)-3-OHiC17:0の合成が終了次第、グルコサミン残基への各種脂肪酸およびリン酸の導入を順次行い、PgリピドAアナログを合成する。
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