迷走神経背側核ニューロンのブドウ糖・Na^+直接投与に対する応答性、および甘味・塩味刺激に対する応答性を調べた。さらに肝門脈受容器刺激に対する応答性をも調べた。背側核で迷走神経腹側胃枝または腹側腹腔枝の電気刺激に対して逆行性応答を示すニューロンの活動のみを記録した。ブドウ糖直接投与の効果:逆行性応答の同定を行った54ニューロン中、多連微小電極法によるブドウ糖投与に対して5ニューロンは放電頻度の増加を14ニューロンは減少を示した。残りの35ニューロンでは放電頻度に変化は見られなかった。また、門脈内へのグルコース注入では35ニューロン中6ニューロンが放電頻度の増加を7ニューロンが減少を示した。Na^+直接投与の効果:逆行性応答の同定を行った102ニューロン中、多連微小電極法によるNa^+投与に対して51ニューロンは放電頻度の増加を13ニューロンは減少を示した。残りの38ニューロンでは放電頻度に変化は見られなかった。さらにNa^+投与に応答を示す背側核ニューロンの、門脈浸透圧受容器刺激に対する応答性をも調べた。その結果Na^+投与に放電頻度の増加を示す17ニューロン中12ニューロンは門脈内高張食塩水注入で放電頻度の増加を示した。放電頻度の減少を示すニューロンは記録できなかった。味覚刺激の効果:逆行性応答の同定を行った37ニューロンに対して舌前方部に10%蔗糖溶液を投与した。その結果8ニューロンで放電頻度の減少が見られた。30ニューロンに対して舌前方部に5%食塩水を投与した。その結果3ニューロンで放電頻度の減少が見られた。以上の結果から、食物摂取後、味覚、肝門脈受容器、中枢受容器のそれぞれが協調して働き腹部迷走神経を介して種々調節を行いうる可能性が示唆された。
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