研究概要 |
実験は酵素処理により調製したラット耳下腺腺房細胞を用いて行った。 1.細胞内cyclic GMP(cGMP)量と細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>])iとの相関性。カルバコール(CCh)、サイブスタンスP(SP)、イオノマイシン(lono)あるいはタプシガ-ジン(TG)で細胞を刺激し、細胞内cGMP量を経時的(5分間)に測定した。CCh刺激によりcGMP量は約2.6倍に上昇したが、SP,lono,TGは無効果であった。一方、[Ca^<2+>]iはCCh,SP,lonoあるいはTGにより著しく上昇した。この結果はcGMP量と[Ca^<2+>]iの変化とは必ずしも相関しないことを示している。 2.[Ca^<2+>]i上昇に対するcGMPアナログやcGMP生成阻害剤の効果。膜透過性cGMPアナログ(dibutyryl-cGMP,8-bromo-cGMP)は単独では[Ca^<2+>]iに対して全く影響を与えなかった。細胞外からのCa^<2+>流入を調べるため、EGTAを含むCa^<2+>-free液中で細胞をイキュベートした後、外液にCa^<2+>を添加したところ、すみやかな[Ca^<2+>]i上昇がみられた。この[Ca^<2+>]i上昇はcGMPアナログの存在下、非存在下で有意な差はなかった。Ca^<2+>-free液中でCChあるいはTGを用いて細胞を刺激し、細胞内Ca^<2+>ストアからのCa^<2+>遊離を起こした後、外液にCa^<2+>を添加した。著しい[Ca^<2+>]iの上昇がみられたが、この[Ca^<2+>]iの上昇に対してcGMPアナログは殆ど効果がなかった。cGMP生成阻害剤LY83583は単独でfura-2蛍光に干渉するため実験に用いることができなかった。 今回の研究ではcGMPがCa^<2+>流入のメディエーターであるという証拠は見出せなかった。cGMPは容量性Ca^<2+>流入機構に直接的には関与していないものと思われる。
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