研究概要 |
大脳皮質第一体性感覚野(SI)の口腔投射野において歯髄の電気刺激に応じる細胞(歯髄駆動細胞)の性質を、笑気と1%ハロセンで麻酔したネコを使って調べた。松本等の報告によると歯髄駆動細胞はその放電様式と歯髄刺激に対する潜時から、短潜時のFタイプ、それよりも長い潜時で応じるSタイプ、およびFタイプの放電に後期放電を伴うFaタイプに大別される。 Fタイプの歯髄駆動細胞は歯髄電気刺激に対して20msの潜時で応答し、その入力を受ける歯牙の数は1〜3(平均1.1)本であった。また、この歯髄駆動細胞は、口唇、舌、硬口蓋などの触刺激にも応じるという性質が見られた。さらに、侵害性痛覚受容のメカニズムを探るためにモルヒネを全身投与したところ(1.5mg/kg,i.p.)、その応答に対して抑制効果は見られず、変化がないか、あるいは潜時の遅いスパイク数の増加が見られた。 一方、情動が痛覚の閾値を変化させることに着目し、情動との関連が深い大脳辺縁系、特に扁桃体やその周辺部を条件刺激したときの、歯髄駆動細胞の単一細胞放電に対する効果を調べた。条件刺激は持続時間0.5ms、強度300mA、330Hzの頻度で100msの間連続的に与えたが、Fタイプの歯髄駆動細胞に対しては扁桃体、およびその周辺部の条件刺激は何の影響も与えなかった。 今後は、引き続きFタイプ以外の歯髄駆動細胞の電気生理学的性質を明らかにし、併せて痛覚受容に対する大脳辺縁系の役割を調べ、歯髄痛覚受容の中枢性機序について研究していきたい。
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