研究概要 |
我々はペンチレンテトラゾール(PTZ)投与によるけいれん刺激により、マウス脳で発現量の変化する遺伝子cDNAを系統的にクローニングした。スクリーニングされたcDNAクローンのうちSEZ-17はPTZによるけいれん刺激でそのmRNAレベルが一過性に減少するものであり、in vitroにて調製されたSEZ-17転写産物(SEZ-17RNA)を注入したゼノパス卵母細胞は、細胞外液にPTZを投与すると緩やかな内向き応答電流を示し、種々のチャネル阻害実験によりこの内向き電流が細胞外カルシウムイオンの流入であることが予想された。そこでSEZ-17RNAを注入したゼノパス卵母細胞の細胞外液にカルシウム結合性蛍光指示剤(Indo-1,Fluo-3)を投与し、共焦点レーザー顕微鏡を用いてPTZ刺激による細胞外カルシウムイオンの流入を細胞生物学的に検討したところ、SEZ-17RNAを注入した卵母細胞では、PTZ投与後経時的に蛍光応答即ち細胞外カルシウムの流入が増加し、さらに流入したカルシウムイオンは細胞膜付近に集積していることが認められた。我々はSEZ-17がコードしている8kDaのアミノ酸配列から2種類のポリクローナル抗体を調製しウエスタンブロットを行ったところ、2種類とも32kDaの蛋白質を同定したが8kDaの蛋白質を同定することはできなかった。同時に行った脳切片での免疫組織化学的検討結果とSEZ-17RNAをプローブとしたin situハイブリダイゼーションの結果とが一致していたことから、SEZ-17がコードする蛋白質がダイマー構造をとっているかまたは、何らかの物質と結合している可能性が考えられる。現在、SEZ-17RNAを注入したゼノパス卵母細胞を用いた免疫沈降実験により32kDaの蛋白質が同定できるかどうか検討中である。
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