ブタの永久歯歯胚より削り集めた幼若エナメル質から抽出され、HPLCによって精製された32kDaエナメリンは、SDS電気泳動時のStains allに対する染色性から、リン酸化タンパク質または糖タンパク質であることが示唆される。 このタンパク質を化学的・酵素的に分解して得られた断片ペプチドのアミノ酸配列分析から、32kDaエナメリンは103個のアミノ酸から構成されており、このうち、アミノ末端領域の^<18>Serと^<43>Serにはリン酸基が、また、カルボキシ末端領域の^<72>Asnと^<79>Asnと^<91>Asnには糖鎖が結合していることが判明した。 糖鎖構造の解明は、二次元糖鎖マップ法によって行った。精製した32kDaエナメリンから酵素的に糖鎖を遊離させ、ピリジルアミノ化(PA化)後、HPLCを行うことによって8種類のPA化オリゴ糖鎖が分離・精製された。各PA化オリゴ糖鎖を連続的にエキソグリコシダーゼ消化を行ない、糖鎖構造の解析を行った結果、それらのアシアロコア構造はバイアンテナ型とトリアンテナ型の2種類に大別された。また、シアル酸の結合様式と結合位置の違いによって、5種類のバイアンテナ型と3種類のトリアンテナ型が存在することが判明した。 32kDaエナメリン中のアスパラギン結合型オリゴ糖鎖の結合可能部位は3ヶ所だけなので、このような糖鎖の多様性が何に起因しているのかを解明することが今後の課題となる。
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