材料と方法 根治的治療を受けた舌扁平上皮癌一次症例で、転移の有無が判明している142例を対象とした。初診時の生検材料のHE標本より、Jakobssonの悪性度評価方法のStructure(Str)、Differentiation(Dif)、Polymorphism(Poly)、Mitotic activity(Mit)、Cellular response(Cell)の5項目についてそれぞれ1、2、3、4で評点付けを行った。これら5つの項目を組み合わせて出来るすべての組み合わせ31通りについて、個々の項目を説明変数、転移の有無を従属変数としてLogistic分析を行い、それぞれのモデルの最大対数尤度(Maximum Log Likelihood、MLL)を算出した。これより赤池の情報量基準AICを求めた。AIC=-2×MLL+2×説明変数の個数 である。 結果 (Str・Mit)の組み合わせが最もAICが小さくなった(AIC=180.28)。以下、(Str・Poly・Mit)、(Str・Mit・Cell)、(Str・Dif・Mit)、(Str・Dif・Poly・Mit)、(Str・Poly・Mit・Cell)、(Str・Dif・Mit・Cell)、(Str・Dif・Poly・Mit・Cell).....の順となった。 考察 AIC自身は「統計モデルのあてはまりの悪さ」を表す数値であり、いくつかの統計モデルがある場合、AICの最も小さいモデルが最もあてはまりの良いモデルということになる。喉頭や口腔の扁平上皮癌の予後予測に用いられているJakobssonの悪性度評価方法の原法では、すべての項目の評点の総和で悪性度を評価するひとになっているが、今回の研究によって、すべての因子をモデルに入れるより、真に予後に影響を与えている因子(StructureとMitotic activity)のみからなるモデルの方が、あてはまりが良いことが明らかとなった。
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