顎骨に生じた病変に超音波診断を応用し、検討を加えた。 本学を受信した患者で顎骨内病変に超音波検査を行った症例のうち、臨床的あるいは病理組織学的に確定診断のついた52例について次の2点を検討した。まず骨内病変でも軟組織内病変と同様の所見が得られるかどうか、すなわち骨内という条件でエコーパターンに変化があるのか、次に皮質骨の厚みはどの程度影響するのか、である。 内部エコーパターンは、臨床的には骨内病変も軟組織内病変と同様のエコーパターンが得られた。とくに皮質骨が菲薄化している場合には本法を骨内病変に適用して有用であると考えた。 皮質骨の厚みとエコーパターンとの関係については、ファントムおよび各種の厚みのプラスチック板を介在物として用い基礎実験を行った。すなわち探触子から1cmの部位に0.5mm、1.0mm、2.0mmの3種類ののプラスチック板を介在し数種のファントムの観察を行うことにより、骨が菲薄化した状態の模擬的な実験を行った。その結果、介在物が厚いほど内部パターンの把握が困難となり、また表層からより深い位置にある対象物ほど介在物の影響を受けた。 骨表面構造の描出能については溝型、鋸歯型、円孔型ファントムを使用し、どの程度の骨表面変化が超音波画像上で検査可能であるのか比較検討し、各種の探触子を使用することにより、1.0mm以上の凹凸は判別可能であると考えられたが、探触子からの距離・介在物質の性状を考慮する必要があると考えられた。 さらに今回、通常静止画として観察されるエコー画像をビデオで録画しパソコンを使用して画像を動画として保存、観察した。その結果、超音波断層像による診断、及び描出能の研究において動画としてエコー画像を用いることは三次元的骨形態の把握・骨表面構造変化の評価に有効であるが、その方法についてはさらに検討が必要であると思われた。
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