研究概要 |
口腔癌細胞株20種類を培養し、ratのPTHrP DNAを用いて、Northern blot解析によるスクリーニングを行ったところ、HSC-3およびNU細胞がPTHrP mRNAを高レベルでconstitutiveに発現していることが判った。以後の実験にHSC-3細胞株を用いた。 HSC-3細胞は、培地の血清量を増加させることにより、PTHrP RNA発現量が増大した。この結果から、血清中に含まれるprowth factorによるPTHrP遺伝子発現の促進が推察された。更に、細胞の分化に影響を与えることが知られている、活性型ビタミンD(1,25(OH)_2D_3)の効果について検討した。1,25(OH)_2D_3は血清無添加の条件下では、HSC-3細胞のPTHrP mRNA発現を用量依存的に促進し、5%血清条件下では、用量依存的に抑制した。また、HSC-3細胞はmatrixmetalloproteinase(MMP-1)mRNAをconstitutiveに発現していることを見出した。MMP-1の合成はHSC-3のような上皮細胞の分化の指標になることが知られている。そこで、PTHrP mRNAおよびMMP-1mRNAの血清誘導のtime courseを検討したところ、PTHrP mRNAレベルの上昇に続いて、MMP-1mRNAレベルの上昇がみられた。このことは、PTHrP合成が上皮細胞分化の促進に関与している可能性を示唆していると考えられる。 【結論】口腔癌細胞株HSC-3はPTHrP mRNAを高レベルでconstitutiveに発現し、その発現量は血清や1,25(OH)_2D_3により制御されていた。更に、PTHrP合成が上皮細胞分化の促進に関与している可能性が考えられる。
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