Fusobacterium nucleatum(フゾバクテリウム)表層糖抗原が好中球の酸素代謝系を活性化する。刺激による活性酸素を化学発光法で測定し、好中球の情報伝達系との関連を研究した。 1.フゾバクテリウム糖抗原に対する好中球受容体 マウス腹腔好中球の細胞膜画分を電気泳動後、ニトロセルロース膜に転写し、フゾバクテリウム糖抗原と結合実験を行った。膜画分の14、31、42、55kDaの蛋白が結合したので、これらの一部あるいは全部が受容体を形成すると考えられる。ヒト好中球では14、42kDaの膜蛋白がフゾバクテリウム糖抗原と結合した。 2.糖抗原刺激-活性酸素産生における情報伝達系 (1)ヒト好中球では、細胞内cAMP濃度は糖抗原刺激により増加し、活性酸素産生と相関を示したが、cGMP濃度は無刺激時のレベルであった。 (2)細胞内Ca^<2+>濃度は、刺激により徐々に上昇するが、同程度の活性酸素産生を示すシオノマイシン刺激時に比較すると濃度変化は約10%であった。 (3)phospholipase C(PLC)阻害剤およびphospholipase D(PLD)阻害剤は、刺激による活性酸素産生をほぼ完全に抑制したが、phospholipase A_2(PLA_2)阻害剤は全く抑制を示さなかった。 (4)tyrosine kinase(TK)阻害剤、herbimycin Aは活性酸素産生をほぼ完全に抑制した。 (5)抗ホスホチロシン抗体を用いたイムノブロットの結果、刺激によって19および40kDaの好中球蛋白が、チロシン残基のリン酸化を受けていた。 以上の結果、フゾバクテリウム糖抗原は好中球細胞膜上の受容体に結合し、刺激によりcAMP濃度の上昇、Ca^<2+>の流入が起こる。また、活性酸素産生にはPLC、PLDおよびTKが関与することが明らかになった。
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