MRSA、B型肝炎ウイルス、あるいはエイズウイルス等の院内感染が社会問題になっている。歯科治療時には出血の頻度が高いことから、血液を介する感染疾患に対しては積極的な感染予防対策が必要である。本研究では酸化電位水、すなわち水道水に0.07%NaClを添加したのち、電気分解して得られるpH2.7以下、酸化還元電位(ORP)1100mV以上、残留塩素12ppm程度の水を用いて、消毒剤としての有用性について検討し、次の結論を得た。 1.MRSA、および緑膿菌に対して酸化電位水を作用させると、作用時間1分で菌の増殖を認めず、消毒剤として十分な殺菌作用を示した。しかし、菌液に血清を添加した場合には酸化電位水の作用は低下したことから、消毒剤に用いる場合には劣化しないだけの十分な水量が必要である。 2.透過型電子顕微鏡にて酸化電位水処理後の緑膿菌を観察したところ、細胞壁は凹凸を呈し、細胞質は不規則に凝集し、空隙が認められた。 3.HBsあるいはHBe抗原陽性血清を酸化電位水を用いて希釈処理して、抗原性をRadioimmunoassay法にて測定した結果、酸化電位水はHBsおよびHBe抗原を不活化した。その作用は極短時間に生じていると考えられる。 4.酸化電位水の生体に与える影響を調べるために、マウスの飲料水に酸化電位水を用いて生後10週まで体重測定を行ったが、水道水で飼育した群と体重に差は認められなかった。
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