異種細菌間の共凝集反応は、プラークの成長機構を解明する上で重要視されているが、それらのヒト歯周ポケット内での実態についてはほとんど解明されていない。本研究では、ヒト歯周ポケット試料に歯周病関連細菌と考えられているPorphylomonas gingivalisをはじめとする12種のプラーク細菌に対する特異抗血清を用いたLSAB法による免疫組織学的2重染色を施し、同一試料上で2種類の細菌種を異なった色彩に染色することによりプラーク細菌間の相互関係を検索した。P.gingivalisは数種の細菌種と特異的な位置関係を示したが、Prevotella intermediaとは主にポケット中央部付近で近接局在しており、非付着性プラーク領域ではin vitroで観察される凝集塊に似た大集団を形成していたのに対し、上皮関連プラーク領域では個々の細菌種の小集団が結合したかのように近接していた。運動性菌であるCampylobacter rectusはポケット中央部から深部にかけて主に歯根付着性プラークの表層および上皮関連プラークから検出され、Actinomyces viscosusとは歯面側でEubacterium nodatumとは上皮側において近接関係がみられた。これらの他にもin vitroにおいて共凝集反応が確認されている細菌種の組み合わせの内のいくつかがin vivoにおいても特異的な位置関係を示したが、ポケットの領域により異なったタイプの近接局在様式が観察され、プラークの成長過程における菌体間の相互作用は複雑なメカニズムにより生じていることが示唆された。また、厳密な意味での菌体間相互作用の形態学的な観察は、電子顕微鏡レベルで検索する必要があり現在、光学顕微鏡でスクリーニングした部位の免疫電顕での解析を行っている。
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