歯周炎の発症機序の解明、有効な治療法の開発のために、多くの実験的歯周炎誘発モデルが考案されてきたが、サル、イヌなどに対して、マウス、ラットなどげっ歯類では歯周炎を誘発しにくい。これらの動物間には、炎症に対する免疫担当細胞の応答性に違いがみられ、また遅延型過敏反応においては、前者ではリンパ球、マクロファージの集積が多いのに対し、後者では好中球が多く浸潤してくる。本研究では、ヒト、モルモット、ラットの免疫系を再建したSCIDマウスを作製し、これらの歯周組織を歯周病関連細菌の内毒素で一定期間刺激し、異種の免疫担当細胞の可溶性抗原に対する挙動の違いと歯周組織の炎症像を組織学的に比較検討した。 ヒト末梢血単核球またはモルモット、ラットの脾細胞を移入し免疫系を再建したSCIDマウスおよび対照SCIDマウスを、予め、内毒素腹腔投与で感作した後、上顎右側臼歯部歯肉を内毒素で刺激し、歯周組織に2次性の免疫応答を誘発した。刺激開始後7日目のマウスの歯周組織をH.E.染色により光顕的観察した結果、ヒト単核球移入SCIDマウスでは著明な白血球の浸潤が観察され、さらにモルモット脾細胞移入SCIDマウスでは破骨細胞による骨吸収窩も形成されていたのに対し、対照マウスでは若干の白血球の浸潤が認められたにとどまった。このことは異種動物由来白血球の炎症性組織破壊に及ぼす影響の違いを示していると考えられるが、今後、細胞表面抗原に対する各種抗体を用いた免疫組織染色により、浸潤細胞の由来する動物種を同定し、さらに多形核白血球、単球、T及びBリンパ球の比率などについて比較検討する予定である。
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