研究概要 |
本年度は,ブラキシズムにより歯にどの程度の咬合性外傷が加わるかを診断する方法を開発するために,歯根膜性状(粘弾性)の変化を動揺度を測定することにより可能かどうかを検討することを目的として研究を行った。始めに,本実験に用いる静的動揺度測定法(歯の荷重変移量および荷重後の残留変移量の測定)と動的動揺度測定法(加速度計による周波数分析とペリオテストによる測定)が歯根膜性状の変化をどのように測定できるかを歯周組織模型を作り検討した。模型は,人工歯を植立する時に歯根膜腔の幅と歯槽骨レベルを一定にし,歯根膜として用いたシリコンラバー印象材の弾性率を変化させてその差をそれぞれの動揺度測定法により測定した。その結果,動的動揺度測定法の加速度計による周波数分析による方法が最も成績が良好であった(第37回秋季日本歯周病学会発表)ことから,本方法を用い以下の実験を行なった。 1.健康なヒト上顎中切歯の揺さぶり力負荷前後の動揺度の変化を調べた。揺さぶり力の付加は自作の装置を用いた。その結果,歯根膜腔の拡大や歯槽骨の吸収を来さない程度の弱い揺さぶり力の負荷においてもその動揺度の変化を促えることが可能であった。 2.歯周疾患罹患歯の動揺度を測定し,臨床的パラメーターである歯肉の炎症,歯周ポケット,早期接触とX線所見との関係を調べた。その結果,歯槽骨の量,および歯根膜腔の幅との相関が高かった。 以上より,本実験にもちいた動揺度測定法は,歯根膜腔の変化,歯周疾患罹患歯の歯槽骨の吸収や歯根膜腔の拡大を正確に評価できる可能性があり,臨床応用の有用性が高いことが示唆された。現在,ブラキシズムとの関係について特にグラインディング時にガイドになる歯の動揺度の変化について測定中である。
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