研究概要 |
螢光抗体法が歯周ポケット内細菌叢の検査法として有用であることを確認したうえで,歯周炎患者の歯周ポケット内グラム陰性菌種の細菌叢と歯周組織が健康な者の局所細菌叢を検索し,さらに初期治療の効果を歯周ポケット内の細菌叢の変化から評価することを試み,次のような結論を得た。 1.P群ではB.gingivalis,F.nucleatum,E.corrodens,T.denticola,B.forsythus,W.rectaの細菌叢の割合がH群に比べ有意に大きかった。P群でのB.intermedius,A.actinomycetemcomitansの菌叢に占める割合はH群に比べて大きいものの,統計学的有意差は認められなかった。 2.H群とP群の各部位での歯齦の炎症程度(GI),プラークの付着状態(PII)とProbingによる出血指数(BI)はその部位でのB.gingivalis,T.denticola,B.forsythus,W.rectaの有無と関連した。またProbing depth(PD)はB.gingivalis,T.denticolaの菌叢に占める割合と相関した。 3.歯齦縁上のplaque controlによって,平均PD6.8mmの歯周ポケット内の総菌数に占めるT.denticolaの割合は減少したが、他のグラム陰性菌種の割合は減少しなかった。 4.Scaling,root planingによってB.gingivalis,E.corrodens,T.denticola,B.forsythusの4菌種の菌叢に占める割合を減少させることができた。 5.Scaling,root planingによってBIが改善しない部位でのB.gingivalis,T.denticola,B.forsythus,W.rectaの菌叢に占める割合は改善した部位に比べて有意に高かった。また,PDの非改善部位でのT.denticolaの割合は改善部位に比べて有意に高かった。 6.以上より,歯周疾患における細菌検査法として螢光抗体法が有効であり,また初期治療の効果を細菌学的に評価する方法として特にB.gingivalis,T.denticola,B.forsythusを指標とすることが有用であることが示唆された。
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