本研究は、各種歯科充填材料が象牙芽細胞に与える影響を細胞レベルで解明することを目的とし、その第一段階としてウシ象牙芽細胞の培養化を試みたものである。 実験方法としては、以上の2方法で行った。方法1.歯胚から象牙芽細胞を分離し培養する。方法2.歯髄中の未分化間葉細胞を分化させて培養する。 方法1.生後2歳未満のウシ下顎骨より根尖の閉鎖していない未萌出前歯を摘出し、抜髄を行い髄腔内をPBSで数回洗浄した後、再びPBSを髄腔内に満たして象牙質表面をマイクロスパーテルで掻把して象牙芽細胞を剥離させた。これらを里吉らの方法に準じて三次元細胞培養用ゲルであるmatrigel 500μlを敷いた24Well組織培養プレートに播種した。培養液10%FCS、50μl/mlアスコルビン酸、ITS^<TM>PREMIX、抗生物質を含有するダルベッコ変法イ-グル培地を用いた。 方法2.上記1と同様に摘出した未萌出前歯から抜去した歯髄を細切し、0.25%Trypsinで撹拌・消化し、分散した細胞をmatrigel 500μlを敷いた24Well組織培養プレートに播種した。そして、上記1と同様の培養液を用いて培養した。 結果:方法1では里吉らの報告のように、培養数週目で細胞突起を有する象牙芽細胞様の細胞が認められた。しかし、増殖は極めて遅く、0.25%Trypsinを用いて継代してみたところ、現在まで継代培養できなかった。方法2では、間葉系細胞の分化と増殖を促進させる基底膜コラーゲンであるmatrigelを基質として培養を行ったが、線維芽細胞様細胞の増殖増殖能が高く、方法1で観察された細胞突起を有する象牙芽細胞は観察されなかった。以上の結果から、ウシ象牙芽細胞の培養化に向けて、今後象牙芽細胞の増殖を高めるような培養条件を究明してつもりである。
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