本研究課題の目的は、歯肉溝滲出液(GCF)や唾液から多形核白血球(PMN)を採取し、その機能を多角的に検索し、それらの情報から歯周疾患罹患部位や健常部位の宿主防御能力を類推する手技を確立することにあった。 そして本科学研究費補助金の交付を受け、1)GCF、唾液そして末梢血中PMNの貧食機能の比較、2)口腔内含嗽液の唾液中PMN貧食能に与える影響、3)歯周病原菌であるA.actinomycetemcomitans(A.a)抽出物の健常者および歯周炎患者の、PMN機能に与える影響に関して検索を行った。 その結果、1)末梢血中のPMNと比較して、GCFや唾液中に移行したPMNの貧食能力が低下していること、2)超酸性水で口腔内含嗽を行うと、唾液中PMNの貧食能が高まり、口腔免疫機能が賦活されること、4)A.a.抽出物はPMNの貧食能、殺菌能、Factin formation機能に変化を与え、特に急速進行性の歯周疾患患者では特徴的な変化を示すことなど示唆された。 以上の過程より、本課題の今後のさらなる展開に必要な各種の研究手法および基礎データを得、研究のベースラインを確立させることができ、さらにまだ一部ではあるが、臨床研究にも発展させることもできた。よってこれらのことから、本研究費補助金を有効に使用することができたものと考える。今後これらの研究手法を用い、さらにさまざまな観点から研究を遂行する予定である。
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