実験動物 臨床的に健康歯髄を有すると思われる歯根の完成したカニクイザル2頭を実験動物とし、上下顎永久歯64歯を用いた。 実験方法 (1)全身麻酔下のラバーダム防湿下で、無菌的に被験材を応用した直接抜髄即時根管充填を施した。被験材として、1群:象牙質削片、2群:α-TCP、3群:HAP+滅菌生理食塩液、4群:Ca(OH)_2を用いた。 (2)実験期間は、1日、7日、14日、28日とした。 (3)実験終了後、10%中性ホルマリンまたはKarnovsky液にて頭頸部灌流固定を行い、薬殺後、顎骨こどに摘出した被験歯をさらに浸漬固定し、実験歯は光顕群と透過型電顕群にそれぞれ分けた。 (a)光顕群はぎ酸で脱灰し、アルコール系列にて脱水、通法に従いパラフィン包埋し、パラフィン連続切片(厚さ7〜8μm)を作製した。その後H-E染色、MG染色、グラム染色、Perdrau鍍銀染色などの染色を施した光顕観察を行った。 (b)電顕群は一部非脱灰のまま、他はEDTAで脱灰し、0.5%タンニン酸ならびに1%オスミウム酸にて後固定の後、アルコール系列にて脱水し、通法に従いEpon812に包埋した。一部厚切り切片は、トルイジンブルー染色して光顕に供し、超薄切片は酢酸ウラン・クエン酸鉛の二重染色を施し、日本電子社製透過型電子顕微鏡(JEM1200-EX型)にて電顕観察を行った。 結果は以下の如くとなった。 光顕群の各実験群においては、被験材に接して著明な炎症反応はみられなかった。2群の7日例では、線維芽細胞の増生、配列が著明であり、根管外に溢出した被験材を貧食するマクロファージなどが散見された。2群28日例では、被験材に接して明らかに新生硬組織の形成がみられた。1、4群においても、根尖部に新生硬組織の形成がみられた。3群では、根尖部は実験期間を追うごとに線維性瘢痕組織により被包されたが、同部に硬組織形成は全く認められなかった。電顕群は、現在試料作製中のものも一部あり、観察中のものも含め結果を総括報告する予定である。
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