本研究は、窩洞内に細菌が残存した状態を想定し、牛歯を一定数の齲蝕原性細菌(Streptococcus mutans)で汚染し、各種歯面処理材のうち今回は3種類の市販象牙質プライマーを作用させ細菌数の変化を観察することを目的とした。予備実験として、3種類の細菌の回収方法、1)牛歯を2分割にしたもの、2)窩洞をバ-にて切削したもの、3)分割等を行わなかったもの、について比較を行ったところ有意差が認められなかったので、以後の実験は3)の方法で細菌を回収することとした。 使用した牛歯は窩洞形成後すべてCo60によるγ線減菌を行った。プライマーの影響を評価するために、規格窩洞中にStreptococcus mutansを播種して各種歯面処理材にて処理後仮封、培養を行った。1週間後に細菌を回収し、0〜10^<-5>まで希釈した細菌をそれぞれ寒天平板培地上で嫌気培養後成育したコロニー数を測定し希釈倍数を乗じてCFU/mlを算定した。統計処理は、一元配置分散分析、危険率5%にて行った。また、各プライマーの抗菌性は、寒天拡散平板法を用い阻止円の直径を測定することによって評価し窩洞内に残存した細菌数の変化と比較した。 実験の結果、プライマーで処理した群では細菌数の減少が見られ未処理群との間には統計学的有意差が認められた。さらに細菌数の減少が見られたプライマーほど阻止円は大きかった。本実験の一部は日本歯科保存学会1994年秋季学会(第101回)にて発表した。
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