本研究では、ラットの実験的根尖性歯周炎モデルを用いて、ビスフォスフォネート系製材を投与して根尖部歯槽骨に及ぼす影響を検索した。 実験には、7週令のSD系雌性ラットを用いた。すべての動物は、実験開始日に、Pentobarbital麻酔下で、下顎左側第一臼歯の歯髄を露髄した。露髄後、動物を2群に分け対照群の動物には0.9%Naclを、実験群の動物には10mg/kgのHEBPを実験終了日まで1日おきに皮下注射した。すべての動物は、露髄後2、4週後にエーテル麻酔下で採血し、屠殺して下顎骨を摘出した。採取した血液から、Ca、P濃度およびALP活性の測定をした。摘出した左側下顎骨は、組織学的観察に供し、右側下顎骨は、骨中のCa、P量の定量に供した。 血漿中のCa、P濃度およびALP活性は、実験期間を通じて対照群、実験群ともにほぼ同じ値を示した。骨の単位あたりのCa量およびP量でも、対照群ならびに実験群ともほぼ同じ値を示した。このことは、骨全体に対する歯槽骨の割合が非常に少ないためにこのモデルにおいて歯槽骨が吸収していても、これらの骨代謝を示す指標には影響を及ぼさないとも考えられる。組織学的には、対照群の2週では、歯髄組織は全体的に壊死に陥っていて、根管の内面には部分的に石灰化物の沈着がみられた。また、根尖部には膿瘍が認められた。歯根膜組織には強い炎症性細胞浸潤がみられ、その周囲には線維性結合組織の増生が認められた。4週では、歯根膜組織には対照群の2週よりも強い炎症性細胞浸潤が認められた。さらに、歯根や歯槽骨の吸収も認められた。実験群の2、4週では、対照群と同様な組織所見であった。しかし、実験群の4週の一部の切片には歯槽骨の吸収の程度が軽いものが観察された。組織形態計測学的には、実験群の4週において根尖病変の大きさが小さい傾向がみられたが有意差はみられなかった。今後、薬剤の投与量ならびに投与期間の影響も検索していく予定である。
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