研究概要 |
【方法】実験は、自然発症糖尿病(GK)ラット45匹と、JCLウイスター系ラット45匹の計90匹を用いた。動物には、上顎右側臼歯の歯間部に糸を挿入し、J-1,2,3群(JCLラット)、G-1,2,3群(GKラット)の6群(各群15匹)に分けた。J、G-1群は、普通食で飼育し、J、G-2群は、糸挿入後3週よりショ糖食で飼育し、J、G-3群は、糸挿入後3週よりショ糖溶液で飼育した。各群の動物は、経時的にブドウ糖負荷試験を行い、糸挿入後6,9,12週で各群5匹ずつ屠殺した。通法に従い臼歯部の組織切片を作製し、組織学的に観察した、また、組織形態計測学的に、歯槽骨の高さを画像解析装置を使用して計測した。さらに、GKラットと、JCLラットの生後2日令(各10匹)の頭蓋骨を培養し、LPSにて刺激し、骨吸収程度を比較した。 【結果】ブドウ糖負荷試験では、G群は、J群と比較して、有意に高い血糖値を示した。J-1,2,3,G-1群は、経時的な耐糖能の変化はみられなかった。しかし、G-2,3群は、ショ糖投与後、経時的に耐糖能が悪化していた。組織学的には、糸挿入後12週でG-2,3群は、他の群と比較して、歯槽骨の高さの減少が認められた。組織形態計測学的にも歯の長さに対する歯槽骨長比は、G-2,3群は、他の群と比較して小さかった。しかし、ラットのLPS刺激下での頭蓋骨のカルシウムリリースはGKラットの方が、少なかった。 【考察】GKラットの耐糖能を悪化させると、病理組織学的ならびに組織形態計測学的に歯周組織の破壊が促進されることが認められた。このことは、全身因子として糖尿病は歯周組織破壊に何らかの影響を与えている可能性が示唆された。さらに今後、ストレスの影響を加えて行く予定である。
|