研究概要 |
(目的)根尖病変の形成には、根尖部歯周組織での炎症反応・免疫応答が、深く関与していることは明らかである。近年、免疫化学染色を用いた根尖病変の組織学的研究が急進したが、T細胞とB細胞間での相互作用や、B細胞の詳細な動態に関しては、未だ推測の域を出ていない。そこで今回、免疫抑制剤によって、T細胞の増殖抑制状態にあるラットを用い、実験的に根尖病変を形成し、免疫組織化学的、組織形態計測学的に検索した。 (方法)1)健常雄性SPFラット(8週齢)の第1臼歯を、ラウンドバ-により露髄させ、その状態にて放置し、実験的に根尖病変を作成した。2)またその日より、実験群のラットには、免疫抑制剤であるFK506(フジサワ薬品社製)の筋肉注射を開始する。この筋注をラットを屠殺するまで1日1回毎日行った。また対照群はFK506 Placeboを注射した。3)露髄後1、2、4、6週後にラットを屠殺し、片側は通法に従いパラフィン切片を作成し、また片側は顎骨内より病変を摘出し、凍結切片を作成した。4)パラフィン切片にはHE染色を施し、病理組織学的に、また画像解析装置を用いて、組織形態計測学的に検索した。凍結切片には、ABC法により、免疫担当細胞の染色を行い、その細胞の動態を検索した。そして、これらの結果を、実験群と対照群間で比較検討した。 (結果)実験期間中のラットの体重の増加は、1、2、4週では実験群と対照群の間に差はなく、免疫抑制剤の全身的影響は少ないと思われる。組織形態計測学的検索においては、1週では対照群と実験群では病変の大きさにほとんど差はなく、2、4週では実験群の方が若干小さいようであったが、有意差は認められなかった。免疫組織化学的検索では、病変中のT細胞は1,2,4週を通し対照群に比べ有意に少なかった。またB細胞数も実験群の方が少なかった。6週と他の免疫担当細胞の動態に関しては現在実験中である。また今後免疫機能が増強したラットを用いて同実験を行い、根尖病変形成と免疫免疫機能との関係について検索していく予定である。
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