すでに、一連の研究の結果、冷水痛を主症状とし自発痛を伴わない症例の歯髄からは、齲窩内に軟らかく湿潤した軟化象牙質を有している症例れいでは80%の比率で、加えて打診痛や温熱痛を伴う症例では100%の比率で細菌が分離されることを明らかにし、その結果、初期歯髄疾患における歯髄感染は、深部象牙質内の細菌の一部が直接歯髄に侵入するすることによって引き起こされること、また侵入した細菌が歯髄中で増殖する段階で、菌種とその比率を変化させる可能性のあることを示唆し、保存学会に於て発表した。今回、冷水痛以外に温熱痛及び、自発痛や打診痛を伴うさらに進行したと考えられる歯髄炎の症例に対して、同様の方法を用い臨床症状と、分離細菌との相関を検索する目的で、10症例において詳細な臨床診査を行ない、細菌を分離し、その結果、自発痛および打診痛を伴う症例からは、すべての症例の齲窩深部象牙質および歯髄において細菌の侵入が認められること明らかにし、分離細菌の菌種およびその分離比率を明らかにするために、同定操作を開始する予定であったが、先に報告したように先日の地震により、保存および継代していた分離細菌を全て喪失した。本年3月より、新たに症例を集めるべくサンプリングを開始している。現在、自発痛および打診痛を有し、臨床的に急性化膿性歯髄炎と考えられる3症例に対して詳細な臨床診査を行ない、齲窩部深部象牙質および歯髄内より、細菌の分離を完了、分離細菌を保存、同定操作を行なう予定である。更に、今後10症例以上に症例数を増やし、今秋までには、結果をまとめる予定である。
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