本研究では、アパタイトインプラントを埋入し骨性結合を得た後に、インプラントと天然歯とで牽引を行うことにより、インプラントがどの程度の側方力に耐えられ、本当に移動しないのかどうかを確認し、天然歯の矯正における固定源としてインプラントが利用できるかを検索するために、以下の実験を行った。 10〜16カ月令のビ-グル犬の下顎両側臼歯部(P3P4M1)を抜歯し、抜歯窩の治癒する約3カ月後に直径4.0mm長さ9mmのアパタイト2ピ-スインプラント(アパセラム【.encircledR.】)を両側臼歯部に1本づつ、隣接歯(P2)から約15mm離して埋入した。インプラント埋入2カ月後支台部合着手術を行い、インプラントおよび隣接歯(P2)の印象採得を行った。 模型上にてインプラントと隣接歯(P2)に、それぞれフックの付いた金属冠を金銀パラジウム合金にて作製し、支台部合着1週後に装着した。金属冠装着後、インプラントと隣接歯を互いに牽引するように、ニッケル-チタン製のセンタロイドコイルスプリングを金属冠のフックに3-0ワイヤーにて結紮した。牽引力は片側を150gとし、反対側はスプリングを2本結紮し300gとした。金属冠装着時、2週後、1カ月後に印象採得し、模型上にてインプラントと隣接歯間の距離を測定した。 結果、2週後より牽引力300gの方の天然歯に傾斜移動が観察され、1カ月ではインプラントと天然歯の金属冠の頂部の距離が約500μm接近した。また、インプラントには肉眼的、X線的に異常はみられず、天然歯の矯正の固定源として利用できる可能性が示唆された。 現在、インプラントおよび隣接歯を含めて顎骨を摘出し、10%ホルマリンアルコールにて固定し、エポキシ樹脂包埋後、末脱灰薄切研磨切片を作製中である。今後、作製された標本を光学顕微鏡にて観察し、インプラント及びその周囲組織に、側方力によってどのような影響がでているのかを組織学的に検索する。
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