研究概要 |
全部床義歯は維持および支持を被圧変位性と可動性に富む口腔粘膜に依存しているため,機能時における義歯床の動揺・変位は避けることができない。しかし,義歯の動揺を最小に抑え維持・安定の向上を図ることは咀嚼・発音などの機能の回復,顎堤の保護の観点からも重要なことである。従って,機能時の義歯の動揺量を定量的に把握し,それを直ちに臨床操作に反映できるような手法を開発することは意義のあることと考える。 その目的を実現するために,小型かつ簡便な加速度センサを用いた動揺量測定測装置の開発を平成6年度より始めた。本年度は基礎的なデータを収集するために,咬合器に装着した模型上の実験義歯を用いて実験を行い,以下の結果を得た。 1)3個の加速度センサを義歯に取り付ける場合,左右の第2小臼歯部に感受方向を上下方向に2個,左右中切歯間に感受方向を左右方向に1個設置するのが最良である。 2)3個の加速度センサの振動波形の発現時間の差は計測不可能である。 3)各加速度センサの振動波形の方向と大きさは,咬合干渉の部位と強い関係がある。 今後,具体的に義歯の動揺を把握し,その動揺を視覚的に認識させるためにも,複数個の加速度データから義歯の変位量および変位方向への変換を行っていく計画である。次年度は加速度データと義歯の変位量との相関式を求めていく予定である。
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