研究概要 |
近年,口腔インプラントを用いた補綴治療が盛んに行われるようになり,その効果を長期間にわたり発揮するためには,オッセオインテグレーションと呼ばれる骨内支持が不可欠であるとされている。インプラント治療は,オッセオインテグレーションを確立したインプラント上に生体と調和した上部構造物の装着が行われて,はじめてその目的が達成できる。本研究では,最終的な補綴物を考慮したインプラント植立位置決定のためのサージカルステント作製法および同装置とX線CT撮影を用いた3次元的なX線骨診断法を確立するため以下の検討を行い,いくつかの有用な結果を得た。 まずインプラント治療を希望する患者に対し,最終補綴物を考慮し作製したサージカルステントを透明レジンにて作製した。その表面にX線不透過物質(オムニパーク300,第一製薬)を塗布した後CT撮影を行うことで,その外形をX線CT写真上に表すことが可能となった。得られたX線写真上の顎骨形態とサージカルステントの外形により,インプラントのサイズ,植立方向を決定した。さらにこのサージカルステントに,診断により決定したインプラント植立方向と一致するドリルのガイドホールを付与し,これに沿って植立窩を形成し,インプラントを植立した。インプラント植立後,再度サージカルステントを装着してCT撮影を行い植立位置および方向を確認したところ,術前に予測したものとよく一致していた。この診査により術前のX線診査の段階で,3次元的な骨形態を把握することはもちろん,最終補綴物の形態もX線写真上に表すことができ,インプラント植立位置や方向を補綴物の形態とよく調和させることが可能となることが示され,この診断法の有用性が示唆された。さらに,このサージカルステントは,診断と植立の際の補助装置として二つのために用いることができ,作業の短縮化にも役立つことが示された。
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