研究概要 |
印象および模型を介しての種々の感染を防ぐために、研究者は、短時間で有効な滅菌法の開発を目指している。本研究においては、まず、広く普及している調理用電子レンジ(EM-M535T,サンヨ-)を用いて、物理的で簡便なマイクロウェーブ照射による滅菌の可能性について調べた。Staphy lococcus aureus 209P付着のプラスチック原型から採得したアルジネート印象の処理を行うと、温度上昇に起因すると思われる、印象表面の殺菌効果はみられるが、水分蒸発による乾燥部位が生じるために、印象体の水分分布が不均一になる。従って、印象の寸法ならびに表面性状は著しく悪くなり、セッコウ模型の寸法精度および表面への影響が危惧される。シリコーン印象については、照射開始直後に放電がおこるために処理が不可能であった。それぞれの印象におけるマイクロウェーブ処理の問題点を改善するために、水溶液に浸漬して照射を試みると、マイクロウェーブ単独ではなく、水温上昇に伴う加熱滅菌ではあるが、家庭用電子レンジでも、十分に適応できることがわかった。今後、出力等の諸条件について、さらに深く検討する必要がある。また、不要になった印象等の医療廃棄物を一般のゴミとして廃棄できるようにするための有効な滅菌方法として、手軽で確実なマイクロウェーブ処理の利用もあわせて検討しているところである。 歯科において、象牙質知覚過敏の緩和に用いられているレーザー治療器(セミコンレーザー MR-180,シャープ)を使用したレーザー照射では、120秒間の処理を行っても殺菌効果はなく、ソフトレーザーでは殺菌効果はないということがわかった。 一方、超酸化水(pH 2.5)に浸漬すると、印象表面の菌数の著名な減少が認められた。この超酸化水への浸漬と、超音波、マイクロウェーブ等との併用効果、ならびにせっこう模型への影響について現在実験を進めている。
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