実験材料として、陽極酸化処理したチタン製人工歯根と陽極酸化処理していないチタン製人工歯根を4本ずつ用いた。陽極酸化処理にはβ-グリセロン酸ナトリウムと酢酸カルシウムを含む電解質を用い、350V電圧下で放電陽極酸化した後、水蒸気中300℃で水熱処理してハイドロキシアパタイト結晶を析出させた。実験動物にはビ-グル犬2頭を用い、下顎左右側第二前臼歯と第一大臼歯を抜去して、3カ月後に前述の2種類の人工歯根を片顎に1本ずつ埋入した。4週間経過後に人工歯根を周囲組織とともに切除して標本採取し、通法に従い非脱灰組織標本を作製してH-E染色を施した後、光学顕微鏡にて観察した。また形態計測装置VIDASにより、人工歯根表面に骨が直接接触している部分の割合(骨接触率)を計測した。 光学顕微鏡所見では、陽極酸化処理の有無に関わらず骨と人工歯根との直接接触がみられたが、その範囲は陽極酸化処理したものでより広い傾向があった。また陽極酸化処理したものでは非薄な線維骨が人工歯根表面を覆う像がみられた。形態計測による結果では、陽極酸化処理していない人工歯根の骨接触率が43.91±6.81%(平均±SD)であったのに対し、陽極酸化処理した人工歯根では61.86±5.78%(平均±SD)であり、陽極酸化処理形成に関して陽極酸化処理が有効であることが示された。
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