研究概要 |
歯根膜と歯槽堤粘膜の被圧変位性の差異から問題視される下顎遊離端義歯をシミュレートし,claspの形態と配置が支台歯の挙動に及ぼす影響を追究した. 材料と方法 1.ニッシン社製67欠損模型を用いシリコーンラバー印象材にて厚径約0.5mmの疑似歯根膜と厚径3.0mmの軟性エポキシ樹脂を用いた疑似歯槽堤粘膜を設定した.2.実験用義歯:義歯Aは直接支台装置として5にAkers Claspを,間接支台装置として54に双歯鉤,4に近心レストを設置した.義歯Bは直接支台装置として5にRPI claspを,間接支台装置として54に双歯鉤,4に近心レストを設置した.大連結子は幅12mm,下縁部の厚さ1.5mmのlingual plateとした.荷重板として10×20mmの平板を上記の支台装置とともにCo-Cr合金にて鋳造,作製した.3.測定方法:荷重点は5の遠心端より7mm,15mmの位置をそれぞれ6,7相当部とした.万能試験機MODEL-1310DWを用いて毎秒0.5mmの等速荷重として4.2kgまでの荷重を加えた.支台歯の挙動変化は,咬合面より設置した測定用ロッドの標点を非接触型レーザー変位計KL133Bを用いて計測し,2次元的に解析した. 結果 1.直接支台装置の5において荷重点7の場合は,義歯Bが義歯Aよりも有意に変位量が大きかった.2.4と5に比較においては義歯A,義歯Bともに有意差を認め,変位量は義歯Aでは4が大きく,義歯Bでは5が大きかった.3.5と4の比較において義歯Bでは5が有意に大きかった.4.各支台歯の総変位量は荷重点7においては義歯AとBの間に有意差を認めたが,荷重点6の場合には認められず,4歯の総変位量は義歯Aの方が大きかった.以上の結果から直接支台装置としてのPRI claspはAkers claspと比較して当該歯の変位量は大きいが,全支台歯の総変位量に対してはAkera claspの方が強く影響していることが示された.
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