研究概要 |
細胞付着性試験において,対照群として用いた通常培養ディッシュでの歯根膜細胞の培養では経時的に細胞数の付着が認められた.すなわち,歯根膜細胞数は培養2時間で2.5×10^3個,培養6時間では4.2×10^3個,培養12時間では6×10^3個を示した.また,これらのディッシュにPECをコーティングした条件で細胞付着を観察した場合では,いずれの観察時間でも対照群と比較して細胞の付着は同等の値を示した.一方,ハイドロキシアパタイトPECコート上で培養した場合及びチタンPECコート表面で培養した場合は対照群とほぼ同様な細胞付着を認めた. 細胞増殖性試験において,対照群の細胞増殖は経日的に増加し,培養2日では約3×10^4個,培養4日では6×10^4個,培養6日では20×10^4個を示し,この時点で細胞は約90%のサブコンフルエンスを示した.ハイドロキシアパタイト及びチタン表面で培養した場合では培養2日および培養4日での細胞増殖は対照群と比較し,減少を示したが,ハイドロキシアパタイトPECコート及びチタンPECコート表面で培養した場合は対照群とその差を認めなかった.しかしながら培養6日では対照群と比較し,やや細胞増殖の減少が認められたが,培養を継続していくに従い,これらの細胞数は増加し,HAおよびチタン表面全体に密に増殖していた. ハイドロキシアパタイト及びチタンにおける細胞付着,細胞増殖の形態学的観察では対照群,PECコートHAおよびPECコートチタンのいずれの場合でも細胞はそれらの表面に密に接着していた.また,細胞間には細胞外基質の形成を認めた. 以上のことから,細胞付着では対照群とその差を認めないが,細胞増殖は対照と比較し,やや遅延傾向を示した.しかしながら細胞増殖の遅延はその後回復していることから,ハイドロキシアパタイトやチタン表面にPECコートした場合でも十分臨床応用が可能であることが示唆された.
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