研究概要 |
オーバーデンチャーの支台装置として用いられるメタルコーピングは,経過観察時に特徴的な摩耗痕が観察される.本研究はその摩耗痕について,発現機構および義歯の動態との関連についての究明を主眼としたものである.現在口腔内にて機能しているメタルコーピングについて,レプリカ法を用いて試料を作成し,走査型電子顕微鏡にてその形状観察を行った.また,レジンフィーメールの実物試料についてX線マイクロアナライザーにて分析を行った. 以下,現在までの観察結果および考察をまとめる. 1.採取した全てのレプリカ試料に摩耗痕が観察され,その形状は点状と線状に区別された. 2.走査方電子顕微鏡にて拡大観察した結果,摩耗痕の短径は50〜80μm,長径は400μmにおよぶものまで観察された.そこで長径が100μm以下のものを点状痕,それ以上のものを線状痕と区分した. 3.点状痕は主にメタルコーピングの頭部に,線状痕は対部に観察された.しかし,隅角部にその移行型が観察されることから,両者の発現機構は同一のものと判断した. 4.点状痕には方向性が観察され,それは推測される義歯の動態方向と一致した. 5.レジンフィーメールの実物試料をX線分析した結果,メールから削り取られ,移着したと考えられる金属粉が観察された.さらに母材成分との凝着による摩耗粉の生成が示唆された. 6.以上から,メタルコーピング上に発現する摩耗痕は,義歯の動態の履歴現象であると考えた.
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