電気化学測定法は、化学物質の変化を電気化学反応としてとらえ、電位、電流あるいは電気量などを測定尺度として調べることが可能である。歯科用合金の腐食の研究において、電気化学反応の律速段階を知ることは、耐食性を評価するうえから考えて重要である。そしてそれは、実用的に耐食性を向上させるためにもきわめて大切なことである。 昨年まで5年間の申請における研究で、電極と溶液の間に定常的な相対運動を起こさせる対流ボルタンメトリによって、歯科用合金の腐食機構を明らかにした。また口腔内環境を仮定した稀な溶液においては、iR降下の補償を行なった測定ができた。さらに2ペンX-Yレコーダの購入で、回転リングディスク電極法の測定装置を揃え試作電極による測定結果から、最適補足率の算出ができた。本年度申請の研究においては、リングディスク電極をいくつかの形状で自作し実験を行なったことによって、リングディスク電極製作上の条件設定ができた。 1.円柱状の電極材料と絶縁材料(テフロン等)の間に溶液がしみ込み、電流のリ-クが生じないように、隙間を完全に密閉する工夫ができた。 2.回転したとき、偏心がない形状の電極が作製できた。 以上を得ることはできたが、なおリングディスク電極の作製は複雑で時間を要する。多くの試料の測定を短時間に行なうには、電極作製を簡便にする必要がある。そのためには、ディスク部分つまり試験合金部位のみをスペアにし、取り替えることによって煩雑な電極作製の簡略化を計りたい考える。今後この点に工夫を凝らし、組成が多岐に渡る歯科用合金の腐食速度の算出に研究を進めるものである。
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