研究概要 |
ラット咬筋の筋細胞レベルのエネルギー代謝を31P-MRSを用いて観察する一方で,動脈血酸素飽和度も同時に測定する。これによって,エネルギー代謝状態の変化と,酸素飽和度とを比較し,咬筋の疲労状態でのエネルギー代謝状態と酸素飽和度の関係を明らかにすることを目的として,ラットの咬筋相当部皮膚表面上にパルスオキシメーターのプローブと,同時にMRS測定用サーフェスコイルを咬筋に貼付し,測定した。その結果,今回の刺激強度である周波数100Hz,刺激持続時間0.2msとした場合は,測定部位の関係で電気刺激用カーボン製電極とパルスオキシメーターのプローブを最低2mm以上離さないと測定値の再現性が得られないことがわかった。これらの測定条件を具備させた上で,咬筋の疲労状態でのエネルギー代謝状態と酸素飽和度の関係を解析した結果,エネルギー状態の指標としてのクレアチンリン酸と無機リン酸の面積比(PCr/Pi比)は,刺激開始4分後に最低値を示した後は回復傾向を示した。一方,動脈血酸素飽和度は刺激開始3〜17秒後に高値を示した後,緩徐な低下を示し,さらに30〜40秒後より再度増加する傾向を示した。これらの事実は,刺激中にもかかわらずエネルギー状態が回復していることを示しており,刺激に対して順応した結果だと考えられる。さらにエネルギー状態と動脈血酸素飽和度との回復のずれは,エネルギー状態を維持するには,それに先行して動脈血酸素飽和度が十分回復している必要がある考えられる。
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