研究概要 |
【目的】口腔外科領域における疾患には,骨(顎骨)に病変がある疾患あるいは骨(顎骨)に病変が波及する疾患が非常に多い。そこで,骨の細胞外有機基質の一種で,骨に特異的なオステオカルシン(Osteocalcin:Oc)に着目し,患者血清中のOc濃度を測定することにより,Ocがその患者の病態,病期,治癒の過程等の指標になるか否かの検討を行うことを目的に、研究を開始した。 【材料と方法】本研究機関では,患者顎変形症患者の入院全麻下における手術が比較的多いため,顎変形症患者から外科的矯正手術前後の血清を採取し,その血清中の遊離Oc濃度を測定した。また,比較的稀な下顎骨線維性骨異形成症の患者の入院全麻下における手術を経験したため,その下顎骨整形手術前後の患者血清遊離Oc濃度も測定した。測定法は,抗ヒトOc抗体と[^<125>I]標識ヒトOcを用いたラジオイムノアッセイ(RIA)法により,本研究機関のアイソトープ総合センターで行った。 【結果と考察】健常者ボランティアの血清遊離Oc濃度は7.6ng/mlであった。顎変形症患者の血清Oc濃度は,術前,術直後,術後1週,術後2週,術後3週,術後4週で,各々6.6,5.3,7.2,8.3,7.9,12.8ng/mlであった。これらの結果から,健常者と顎変形症患者の術前値とに差は認められなかった。また,顎変形症患者の術後の値の変動では,術直後に術前と比べ低値を示し,その後は術前値ないしはそれよりやや高値に上昇した。術後4週ではさらに高い値が得られたが検体数が少なく,はっきりと結論づけることが出来なかった。線維性骨異形成症患者では,術前では平均13.5ng/mlで健常者より高い値を示した。術後は術前より低値となり,術後1週,2週,3週,4週でそれぞれ7.4,6.8,9.0,10.0ng/mlという結果が得られた。現在,術後6ヶ月経過しているが,現在の値は6.5ng/mlである。
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