サイトカインは免疫学的メディエーターであるが、その中でもインターロイキン6などは内因性発熱物質であることが知られている。前年度の研究で口腔外科手術侵襲によって血中インターロイキン6(IL-6)レベルが上昇することを報告したが、手術侵襲で産生されこのサイトカインが術後の発熱に関与している可能性は高いと考えられる。そこで今回の研究では、術後の発熱と血中サイトカインレベルとの関係を解明することを目的とした。今年度は、サイトカインの中のIL-6、TNF-αについて、口腔外科手術を受けた患者11名に対して、術後の経時的深部体温・深部体温上昇度・熱産生(ふるえ)・熱放散抑制(末梢血管収縮度)との関係について解析を行った。 (結果) 1.血中IL-6レベル(術直後、術後2、4時間)と術後発熱との関係について (1)術後30分〜4時間の深部体温と高い相関関係にあった。 (2)術直後のレベルは術後1時間の深部体温上昇度と高い相関関係にあった。 (3)術直後のレベルは術後1時間までの「ふるえ」の程度と相関関係にあった。 (4)術直後のレベルは術後1時間までの末梢血管収縮度と相関関係にあった。 2.血中TNF-αレベル(術直後、術後2、4時間)と術後発熱との関係について (1)深部体温・ふるえ・末梢血管収縮度のいずれも相関関係はみられなかった。 (今後の展開) 今年度の研究でIL-6と術後発熱との密接な関係が示唆されたが、今後、発熱物質と考えられている他のサイトカイン(IL-1β、MIP-1α)についても検討を行う。さらに、術後発熱以外の生理学的・免疫学的反応と血中サイトカインレベルとの関連についても解析を進めていく計画である。 なお、今回の研究成果の一部は第22回日本歯科麻酔学会総会(札幌、1994年10月)において発表した。
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