研究概要 |
ベンゾジアゼピン系薬剤の臨床的薬理効果は、投与後の影響について多くの手法で評価されてきたが、投与前にその影響を予測することを目的とした評価方法は確立されていない。そこで、この研究では末梢血中の単球、マクロファージ上に存在するベンゾジアゼピン受容体の定量測定と、ベンゾジアゼピン系薬剤の臨床的薬理効果判定を行い、両者の関係を解明することを目的とした。ベンゾジアゼピン系薬剤の臨床的薬理効果判定には、微妙な影響を比較的正確に反映し、客観的な定量測定が可能な平衡機能検査を用いた。ベンゾジアゼピン系薬剤の代表的な注射薬のミダゾラムを投与した結果では、平衡機能障害の程度に大きな個人差が認められた。障害の大きな症例では投与前、投与30分後、60分後、120分後、180分後の閉眼での1分間の重心動揺距離はそれぞれ65.89cm、472.43cm、205.16cm、88.46cm、64.02cmであったのに対し、障害の少ない症例では同様にそれぞれ78.08cm、88.51cm、61.04cm、84.24cm、72.62cmであった。一方、血球については受容体の機能を解明する必要が生じたことから、免疫の中心的機能を担当するリンパ球を精製して用いた。ベンゾジアゼピン受容体の定量測定にはアイソトープで標識されたリガンドを使用した。受容体濃度、反応時間、反応温度について予備実験を行い、最も適当と思われる条件を決定した。今後、得られた条件下で受容体の定量測定を進めていく計画である。 ベンゾジアゼピン受容体には中枢型と末梢型の2種類があり、たとえば1,4-ジアゼパムは、中枢型と末梢型の両方に特異的に結合するが、末梢型には比較的親和性が低いという特徴がある。そこで今後の展開として、単にベンゾジアゼピン受容体の定量測定だけでなく、中枢型・末梢型を区別した受容体の定量測定を行い、その結果と臨床的薬理効果との関連を解明することが必要であると思われた。
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