研究概要 |
前年度までの検討で、口腔扁平上皮癌の増殖局所におけるlamininの発現が少ない腫瘍に頸部リンパ節転移が多いことを明らかにしたそこで、lamininに対する分解酵素であるcathepsin Dならびにcathepsin Gの発現とlamininの局在様式との関連について、口腔扁平上皮癌18例を対象に検討した。cathepsin Dは腫瘍細胞の細胞質に細顆粒状の反応物として観察された。cathepsin Dの発現とlamininの局在様式との間には関連性は認められなかった。cathepsin Gの発現は腫瘍細胞には観察されず、間質の巨細胞様細胞の細胞質とリンパ球に顆粒状反応物として観察された。lamininの局在様式との関連では、癌胞巣内リンパ球浸潤がみられlamininの線状反応が断裂している腫瘍ではcathepsin Gの発現が認められた。 第8因子関連抗原の免疫組織学的検索による癌の増殖局所における脈管数の程度と頸部リンパ節との関連について口腔扁平上皮癌37例を対象に検討した。脈管数の程度別の症例数は、+:13(35.1%),++:9(24.3%),+++:15(40.5%)であった。原発巣進展度(T分類)と脈管数の程度との間には一定の傾向はみられなかった。対象37例の頸部リンパ節転移頻度は37.8%(14/37)で、T分類別ではT1,T2(n=23):17.3%(4/23),T3,t4(n=14):71.4%(10/14)であった。これを脈管数の程度別にみると、T1,T2では+(n=9)のみに44.4%(4/9)と転移がみられ、T3,T4では+(n=4):75.0%(3/4),++(n=3):66.7%(2/3),+++(n=7):71.4%(5/7)であった。以上のように、原発巣非進展例(T1,T2)に限ると、脈管数の少ない腫瘍に頸部リンパ節転移が高率にみられた。
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