研究概要 |
ベンゾジアゼピン系抗不安薬(以下、BZP)の中枢神経系作用発現機構とbenzothiepino-pyridazine誘導体による,鎮静,筋弛緩,意識レベルの抑制などのない抗不安,いわゆる鎮静のない抗不安の可能性を脳内神経伝達物質動態から検討した.当該粘土は,SDラットを用い,不安や恐怖などの発現に重要とされる扁桃体基底外側核モノアミン神経活動の変動を,不安,恐怖条件下で観察し,さらにBZP(midazolam),benzothiepinopyridazine誘導体薬(Y-123684)を投与した際の変動を検討した.その結果,1.実験的不安・恐怖状況(Conditioned fear以下CF)により扁桃体基底外側核(以下BLA)のセロトニン(以下5-HT)細胞外量が増加する.2.自由行動状態のラットにmidazolam0.1あるいは0.3mg/kgをを静脈内投与した際には,0.1mg/kgではBLAの5-HT細胞外量は変化しないが,0.3mg/kgでは減少する.3.自由行動状態のラットにY-23684 0.3あるいは1.0mg/kgを静脈内投与した際には,ともにBLAの5-HT細胞外量は変化しない.4.midazolam 0.1mg/kgあるいは0.3mg/kgCF直前に静脈内投与した際には、BLAの5-HT細胞外量の増加は抑制される.5.Y-23684 0.3mg/kgあるいは1.0mg/kgをCF負荷直前に静脈内投与した際にも、CFによるBLAの5-HT細胞外量の増加は抑制される.以上の結果を得た.すなわち,自由行動状態ではBLAの5-HT神経活動を変化させないmidazolamやY-23684の投与量で,CFによるBLAの5-HT神経活動亢進が抑制されることを観察した.また,Y-23684 0.3mg/kgは筋弛緩作用を発現しないことも観察した.これらのことから,ベンゾシアゼピン系抗不安薬とbenzothiepinopyridazine誘導体の抗不安作用の中枢神経系作用発現機構の一つとして,BLAの5-HT神経活動への作用が示唆され,Y-23684により鎮静のない抗不安が可能なことが示唆された.
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