歯性感染症におけるニューキノロン系抗菌薬の投与方法を検討する目的で、抗菌薬の新しい効果指標であるpostantibiotic effect(以下PAE)を測定した。 歯性感染症由来の臨調分離株S.anginosusを被検菌とした。各ニューキノロン系抗菌薬4MICのPAEはOFLX1.6h、TELX2.1h、NFLX1.0hであった。他のβラクタム系抗菌薬についても同様に実験を行ったがABPC0.7h、AMPC0.7h、CCL0.4hとニューキノロン系抗菌薬のPAEは有意に長かった。 薬剤濃度がPAEに与える影響については、OFLX0.5MICで0.1h、TELX0.5MICで0.5hとMIC以下の濃度でのPAEは著明に短縮した。MIC以上ではOFLXで1MIC0.7h、2MIC2.0h、4MIC1.7h、8MIC1.5h、TELXで1MIC1.6h、2MIC1.8h、4MIC2.5h、8MIC2.3hと薬剤濃度の増大に伴いPAEは延長したが、2MIC、4MICをピークとしてPAEは減少した。この点に関しては現時点では不明であり、今後研究を続けたい。 以上の点からS.anginosusに対してニューキノロンはPAEを有しており、抗菌薬消失後にも細菌に対する増殖抑制効果が期待できることが判明した。薬剤濃度とPAEの関係は、MIC以下の濃度でPAEは短縮し、MIC以上の濃度で長いPAEが認められることより、起炎菌のMIC以上の作用濃度が達成されることが重要と考えられた。今後薬剤濃度とPAEの関係については、MIC、抗菌特性などを追加検討し、明らかにしたいと考えている。
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