研究概要 |
中枢性筋弛緩剤(以後筋弛緩剤とする)の顎関節症の筋痛に対する臨床効果が報告されている。しかし、筋弛緩剤が筋痛のどの病態に有効なのかについては不明であり、また咀嚼筋に対する薬理学的効果も検討されていない。通常、筋弛緩剤投与後に骨格筋を直接刺激しても薬剤の筋収縮力に及ぼす影響は少ない。また骨格筋強縮刺激後には収縮後充血が生じることは知られている。この収縮後充血は筋の収縮量、収縮時間、筋血流量などの影響を受ける。一方、筋弛緩剤の骨格筋血流改善作用が筋痛に有用であることは示されている。そこで、筋弛緩剤投与前後の咬筋の収縮後充血を測定することが、筋弛緩剤の薬効判定の一助となると考え、以下の実験を行った。 目的:中枢性筋弛緩作用をもつ塩酸ランペリゾンの咬筋収縮後充血を測定し、本薬剤の咬筋に対する薬効を検討した。 方法:麻酔下ラット9匹に上記薬剤5mg/kgを静注し、8v,duration 0.1ms,100Hzの強縮刺激で2秒間咬筋を刺激し、レーザードップラーを用いて咬筋の収縮後充血(最大量)、収縮後充血出現時間(収縮後充血が最大になるまでの時間)および収縮後充血半減時間(収縮後充血量が最大の1/2の減少するのに必要な時間)を計測した。 結果:投与前後の収縮後充血出現時間および収縮後充血には有意差がみられなかった。収縮後充血半減時間は投与後30分まで投与前より有意差に短縮した(P<0.05)。 以上、塩酸ランペリゾン投与によって収縮後充血量は変化無かったことより、咬筋の運動量には影響が無いと考えられた。また収縮後充血時間を有意に短縮させたことより、筋組織内血流を改善させ、筋弛緩を速やかに改善し、短時間で収縮後充血を終了させると考えられた。これらの結果は、筋弛緩剤の薬効判定にレーザードップラーを用いた収縮後充血の測定が有用であることを示唆している。
|