研究概要 |
現在の全身麻酔薬の主流をなしている揮発性麻酔薬による肝障害と心筋抑制や、高流量半閉鎖循環式の麻酔法による室内汚染などの諸問題が提起されている。これらの解決策として完全静脈麻酔法の検討が始められているが、その方法は確立されたものではなく、薬剤投与の基準となる正確でかつ簡便なパラメータの出現が望まれる。近年、血中濃度をコンピューターで抑制することによって、安定した麻酔深度を得る研究も行われているが、血中濃度と麻酔効果の間には、各個体の感受性の問題が介在することから、薬剤の効果器を直接ターゲットにしたパラメータがより有効であると考えられている。そこで本研究では,完全静脈麻酔法に組合せ投与する鎮痛性薬剤(ブトルファノール,フェンタニール,ケタミン)とミダゾラムのSEPに与える影響を分析し、SEPが薬剤投与のパラメータとなり得るかを検討し、さらにSEPをパラメータとして使用できる薬剤の組合せについても検索し次の結果が得られた。 1)ブトルファノールは、P1-N1振幅を増加させた。ブトルファノールの投与は、ミダゾラム投与時のP1-N1振幅を増加させた。 2)フェンタニールのP1-N1振幅に与える影響は少なく、P1潜時を有意差をもって延長させた。フェンタニールは、ミダゾラム投与時の振幅に対する影響は少なく、ミダゾラムもフェンタニール投与時の潜時の延長に影響を及ぼさなかった。 3)ケタミンは、P1-N1振幅を有意に抑制させた。ケタミンの投与は、ミダゾラム投与時のP1-N1振幅の抑制に対して影響は少なかった。P1潜時はケタミン単独投与と2薬剤投与で異なった傾向が認められた。 以上の結果より、SEPを薬剤投与のパラメータとした時、フェンタニールとミダゾラムが薬物動態を予測できる薬剤の組合せであることが示唆された。
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