口腔外科領域において下顎骨疾患のCT画像についての報告は少ない。申請者らは下顎骨に生じた嚢胞および腫瘍性疾患に対し、CT画像を中心に検討した。 対象症例は、1987年〜1993年の7年間に神奈川歯科大学口腔外科を受診した45症例である。内訳は、下顎嚢胞29例(非角化性含歯性嚢胞10例、歯原性角化嚢胞<原始性、含歯性>9例、非角化性原始性嚢胞2例、石灰化歯原性嚢胞3例、歯根嚢胞1例、脈瘤性骨嚢胞1例、外傷性骨嚢胞3例)。下顎腫瘍13例(エナメル上皮腫9例、エナメル上皮線維腫1例、粘液腫1例、化骨性線維腫2例)その他3例(好酸球肉芽腫2例、巨細胞肉芽腫1例)である。結果は発生部位では嚢胞が下顎枝から大臼歯のものが多く、腫瘍では下顎枝より小臼歯部に至る大きなものが多かった。形態は嚢胞では単胞性のものが77%を占めたが、腫瘍では多様であった。骨膨隆は腫瘍では93.8%に認められ、嚢胞では58.6%に認められた。患側の頬舌径に対し健側の頬舌径との比を取り、膨張率を計測したところ、腫瘍では高値を示し嚢胞ではその多くが低値を示した。これにより腫瘍性疾患では全方位的に発育し嚢胞性疾患では近遠心的に発育する結果が得られ、鑑別診断の1指標となることが示唆された。また、CT値では石灰化歯原性嚢胞、化骨性線維腫では高値を示したが、全体に腫瘍性疾患の方が高値を示した。
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